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【SPARK12 新刊】Avenger-vol.1-

2017.10.07 (Sat)
SPARK12 新刊
Avenger -vol.1- A5サイズ P68 700円

avenger-vol1-


堂上がまだ図書大時代だったころOJTで夜間巡回をしていた時、不遇の死を遂げた遺体を見付ける。
それは指導教官の大切な人で・・・

時は過ぎ、11年後。
郁との結婚を目前に控え、堂上と郁は基地内で起きるた連続殺人事件に巻き込まれる。

「最後の愛を亡くしたとき、お前はどうする?」

春のドラマCRISISにインスパイアされた話
(パロでもないしドラマも関係ありません)」

※冬コミ合わせで簡潔予定です(><

序章








 あの夜の事を思い出すことは長らくなかった。

 いや、正直に言えば意識的に思い出さないようにし、いつの頃からか意識をせずとも思い出さなくなったというべきか。

 だが、思い出そうと思えば今もはっきりと思い出すことが出来る。

 あの季節外れの嵐の夜を。










  十一年前

    二〇十三年 二月某日 〇一〇〇

         関東図書基地 防衛部庁舎



「堂上、外は酷い嵐だ。警戒は怠るな。やつらは天気なんざ関係なく仕掛けてくる時は仕掛けてくる」

 指導教官の指示に、堂上は姿勢を正して敬礼をし短く返事をする。

 手本のように綺麗な敬礼に、指導教官は鷹揚に頷き返すと、行くぞと声を掛けて歩き出す。

 その背を追うように堂上も歩き始めた。

 OJTを開始してすでに一年近く経過し、今月末の認定試験を終えれば春からは正式に図書隊員の一員となって、本を守る任務に就くことになる。

当然、業務の流れは掴めてはいる。

 とはいえ毎日同じような流れでも、同じで済むことはなく、日々新しい発見、勉強に邁進し続けていた。

 任務中に悪天候があたったことももちろんある。だが、夜間基地巡回班時に悪天候――いや、嵐に遭ったたことは今までなかった。

 だから、これはある意味初めての経験だ。

 指導教官の注意事項を聞き漏らさないように、意識を向け準備を進めていく。といっても隊服の上から雨合羽を羽織り、フードを目深に被るというのが通常スタイルと違う点だが、フードを被るためどうしても視野が狭くなり、吹き付ける雨などが視界を遮るため見通しも悪い。

 強風でしなる枝が立てる音。唸る風。激しく打ち付ける雨音。それらがどうしても周囲の気配や音を飲み込んでしまうため、今までのように警戒がどうしても行き渡らない。

 そんな苛立ちが指導教官にも伝わったのだろう。

 指導教官は片手でフードのつばを押さえながら、どこか楽しげな声を張り上げる。

「お前は引きがいいなぁ! こんな悪天候の夜間なんざそうそう当たらないぞ! これも良い訓練になる。野良猫一匹でも紛れ込んでないかしっかりと意識研ぎ澄ませ!」

「はいっ!」

 引きがいいと言われるとおもしろくはないが、確かになかなか無いチャンスだ。と堂上は意識を切り替える。

 仲間達にはこんな日に当たるなんてついてないなと言われたが、抗争はいつ何時おこるか分からないのだから、こんな日がたとえ巡回であっても経験できたことは、自分にとってプラスになるはずだ。

まだ学生の身であり、OJTの立場では抗争にまで出ることはないが、寮にいれば抗争が起きていることは分かる。

 天候などかまい無しで良化隊は検閲を行うため、台風の時に抗争が行われたこともあった。

 むろん悪天候を想定した訓練を行ってはいたが、夜間の台風の抗争がどんなに危険が伴うことか、普段とは違いかすかにしか聞こえてこない抗争の気配に、想像だけは膨らませていた。

 巡回だけで戸惑っているようでは、抗争では立ち往生で間違いないだろう。

 堂上は改めて気を引き締めて、周囲に注意深く意識を向けていく。

 外に出ただけで強い風に身体が煽られ、前屈みに重心をとる。

 これでは、引き金を引くことも至難の業になるのでは無いか。風に煽られて銃口は定まらず、強風が弾の行方を狂わせて予想外の方へ飛んでいくだろう。

 全身に容赦なく叩きつける氷雨が体温を奪っていくため、指先や足先が痛いほどかじかんでいき、歯の根が合わなくなってくる。

 いくら身体を鍛えていてもこの氷雨の前では無力だと言わんばかりだ。

 基礎代謝がどれほどあっても、瞬時に熱が奪われていく。

 女子防衛員達はすぐに動けなくなるのでは無いか。ともなればどうしても後方支援の機動力が落ちる。

 大半は男子隊員とはいえ、後方支援には女子もそれなりにおり起動低下は無視できない。こういった天候の時には機動力が落ちることを考えて動かなければ、すぐに補給は絶えるだろう。

 男女関係なく悪天候時の機動力低下は、OJT始まるまえから指導は受けている。だが、実際に経験して見なければ、それがどの程度低下していくのかということは分からない。

 堂上は白い息を吐き出しながら、実戦の場に立つ前に経験できたことをありがたく思いながら、巡回を順調に行っていく。

 木が大きくしなり、雨が縦横無尽に吹き荒れる中、出歩くような酔狂な人間はさすがにいない。まだ、時刻は消灯前ではあったが基地内に人影はほぼないといっていい状況だ。

 ほぼ真っ暗な庁舎に、ぽつりぽつりと浮かぶ明かりは残業組か、夜勤組か。途中から雷も加わり轟音が轟く中、誰ともすれ違うこと無く巡回は終了するはずだった。

 手に持った懐中電灯で周囲を照らす。

 寮の裏手は恋人達が密かに逢瀬を重ねるスポットになっているが、今日は当然無人だ。彼らの逢瀬を邪魔してしまう心配がないのは助かるが、雨の降りが強すぎて、懐中電灯のライトが樹影まで届かないのは厄介だ。

 それでも不審な物が無いか意識を凝らしながら歩いていくと、ほんの二歩ほど前を歩いていた指導教官が唐突に足を止めた。

「どうかされましたか?」

 何も言わず黙したままの指導教官に堂上は声を掛けるが、応えはない。

 雨で声がかき消されて届かなかったのか。

 堂上は足を進めて隣に立ち指導教官が見ているとおぼしき方向へ視線を向けるが、生い茂る植え込みが風に揺さぶられているだけだ。

 目をこらして懐中電灯を四方に向けるが、異常は見受けられない。

「北川教官、どうかされましたか?」

 微動だにしない指導教官である北川を見上げる。

 その顔は未だかつて見たことがないほど強ばっていた。

 大きく見開かれた目は血走り、少しだけ開いていた唇がわずかに震えている。

 何か言葉を呟いているように見えたが、何を呟いているのかは風に雨、雷鳴が轟いているため聞き取ることができなかった。

「北川教官?」

 いったいどうしたというのか。

 なにか問題が起きているのなら、すぐに本部に連絡を入れるのが、巡回のセオリーだと何度も北川本人から言われていた。だが、まるで彫像と化してしまったかのように北川は微動だにしない。

(いったい何を見ているんだ?)

 堂上は怪訝に思いながら指導教官である北川の視線の先を追う。

 正面――ではなく、その上を見ている。

(上?)

 木が枝を広げているが、落葉樹のため今の季節はほぼ丸裸だ。

 その木に何かが引っかかっており、黒いシルエットがゆらゆらと強風に煽られて揺れている。

 機材か何かが風に飛ばされて引っかかっているのか。最初はそう思ったがその形に機材の類いではない事にすぐに気がつく。

 ちょうどYの字状態の枝に引っかかっているのはサッカーボール大の丸い玉。その下から伸びた物が左右に揺れている。

 それがなんで有るのか――人型にしか見えないシルエットに堂上はぎょっとし、反射的に悲鳴がでかけるが、それは空気を飲みこむことで堪える。

(落ち着け。等身大の人形……マネキンか何かだ)

 最初はそうとしか思えなかった。

 図書基地の倉庫内には何でこんな物が? と首を傾げたくなるような物が色々とある。その中に業務部が過去にイベントで使ったマネキンなどがしまわれていることも、堂上は知っていた。

 だから、この時一番初めに浮かんだのはマネキンが風に飛ばされて木に引っかかっている。ということだ。

 ぎょっとしたがマネキンと思えば悲鳴を上げずに済んで良かった……と胸をなで下ろす。

 こんな状況で驚かない人間がいるはずがないが、みっともなく腰を抜かしたり悲鳴をあげたりするところを、教官とは言え他者に見られること無く済んだのは御の字だ。

 とりあえず、この嵐の中このまま放置しておくのは危険だ。降ろした方がいいのは分かっているが、はたして脚立などを持ってきて降ろせるか。風の強さから考えると、二次災害が起こるのでは無いか。

 そんなことを考えながら、堂上は北川に指示を貰うべく声をかけようとして、止まる。

「……うそだ――がう。何かの間違いだ」

 譫言のように北川から漏れる言葉に、堂上は怪訝な顔をする。

 いったいどうしたのだろうか。

 状況が読めないまま北川を呼びかけるが、堂上の呼びかけに答えることは無く、北川はふらふらと近づいていく。

「北川教官? どうかされましたか?」

 北川はマネキンの下まで近づくと背伸びをして手を伸ばす。だが、身長百八十以上ある北川がつま先立ちをして手を伸ばしても、指先はマネキンの足先にすら触れることはできない。

「降ろすんでしたら今脚立を……」

 持ってくるという堂上の声が聞こえないのか、北川は背伸びをし、ジャンプをしてそのマネキンに向かって手を必死になって伸ばす。

「北川教官!?」

 北川の唐突な行動に堂上は理解できず、ライトをマネキンにあてた。

 飛ばされてきたマネキンが、いったいなんなのか見定める為に。

 そして、堂上の目はこれ以上無いほど見開かれる。


 ゆらゆらと枝に首が引っかかって揺れる丸い玉。

 長い髪が風に煽られて舞い上がる。

 力をなくした瞳は半分ほど白目をむき、ぱかりと開いた口からは腫れた舌がつきだしていた。

 その身を覆う衣服は乱れており、引きちぎられたブラウスは、まるでぼろぼろになった海賊の旗のように、風に煽られてはためいている。

 はだけたブラウスからは白い乳房が露出し、スカートには鉤裂きができ、懐中電灯に照らされた太ももが白く闇に浮き上がる。


 強風に煽られて時計の振り子のように揺れる身体は、マネキンなどの人工物では無く生身の人間。

 

 それを認識した堂上は何かを叫んだかもしれない。

 だが、堂上の叫び声を一緒に居た北川は、認識することは無かった。

 堂上以上に北川は声を張り上げていた。

 何かを叫びながらゆらゆらと揺らめく華奢な身体に手を伸ばし続けていた。


(この人は――)


 直視することが出来ずライトを反らしたものの、堂上は唇を噛みしめて拳を強く握り、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。


(この人は  北川教官の  )


「……し…………ん」


(北川教官の――)


「篤――さん?」


 ゆらゆらと揺れる。

 大木が、木々が、枝が、命を無くした身体が。

 ゆらゆらと揺れる。

 視界に映る全てが。


      続きは「AVENGER vol.1」へ♡
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